頭痛に新薬ナルティークを使ってみた実感|ちゃんと効くが「1錠1,000円」の壁…レイボーとの使い分けで凌ぐ日常
本記事は、難病当事者による闘病体験および公的情報・添付文書等の個人調査に基づいています。医学的診断・処方・治療の指示を行うものではありません。服薬や治療の変更・判断は、必ずご自身の主治医にご相談ください。
ついに手を出した新薬「ナルティーク」
群発頭痛の激痛期や、日常的に襲ってくる重い片頭痛の発作。 これまでトリプタン系製剤(イミグラン等)やCGRP抗体注射薬(アイモビーク等)、そしてジタン系の「レイボー(ラスミジタン)」など、様々な薬を試しながら痛みをコントロールしてきました。
そんな中、新しく登場した経口CGRP受容体拮抗薬(いわゆるゲパント系)の**「ナルティーク(一般名:リメゲパント水和物)」**を主治医に処方してもらい、実際に発作が起きたタイミングで服用してみました。
結論から言うと、**「効果は抜群に良かった。しかし、薬価が高すぎて続けられない」**という、新薬特有のシビアな現実に直面しています。
ナルティークの服用感:ちゃんと効く、しかも頭がクリアなまま
ナルティークは「口腔内崩壊錠(OD錠)」というタイプで、アルミ包装から取り出して舌の上に乗せると、唾液だけで数秒でサッと溶けます。水を用意する必要がなく、外出先や発作が起き始めた瞬間にすぐ口に放り込めるのは、頭痛持ちにとって大きなメリットです。
実際に飲んでみて感じた効果は、以下の通りです。
1. 痛みがスーッと引いていく確かな手応え
服用してから30分〜1時間ほど経つと、脳の奥底でドクドクと脈打ち始めていたあの嫌な痛みの波が、自然と鎮まっていくのを実感しました。 「あ、痛みが消えていく」という感覚がはっきりとわかり、急性期の頭痛発作に対して**「ちゃんと効いた」**という手応えがありました。
2. トリプタン特有の締め付け感や気分の悪さがない
従来のトリプタン系製剤を飲んだときにありがちな、胸や喉の圧迫感、肩や首筋のこわばり、血管が無理やり収縮させられるような重苦しさが一切ありません。
3. 何より「眠気や痺れ」が出ない
これが個人的に最も感動した点です。後述するレイボーのように、意識が朦朧としたり体が痺れたりすることがなく、**「頭痛だけが綺麗に消えて、頭はクリアな状態が保たれる」**のです。
日中にこの薬を飲んでも、普段通りに仕事や作業を続けることができました。
対するレイボーの現実:効くけれど「体が痺れて動けなくなる」
これまで私が頓服として使ってきたのが、ジタン系治療薬の**「レイボー(ラスミジタン)」**です。
レイボーも、頭痛を抑える力自体は非常に優秀です。トリプタンが効きにくくなった発作でも、しっかり痛みを断ち切ってくれる頼もしさがあります。
しかし、レイボーにはどうしても無視できない致命的なデメリットがあります。 それが、**「体が痺れて、完全に動けなくなる」**という強烈な中枢神経系の副作用です。
レイボーを飲んだ後の「活動不能状態」
レイボーを服用して30分もすると、まず手足の先から全身にかけて、独特のピリピリ・フワフワとした痺れ感と脱力感が広がってきます。 平衡感覚が狂ったようになり、真っ直ぐ立って歩くことすら難しくなります。さらに強烈な浮動性めまいと泥のような眠気が襲ってくるため、**「布団に倒れ込んで、数時間じっと目を閉じてやり過ごす」**以外の選択肢がなくなります。
「家にいて、あとは寝るだけ」という夜間であればそれでも構いません。 しかし、平日の日中や仕事中、外出先で頭痛が起きたときにレイボーを飲むと、その日の活動が完全にストップしてしまいます。 「頭痛は治まったけれど、副作用の痺れと倦怠感で結局何もできない」というジレンマに、ずっと悩まされ続けてきました。
ナルティーク最大の絶望:高すぎる!!1錠1,000円近くの破壊力
副作用で体が痺れることもなく、頭痛をスッと抑えて日中の活動を維持できるナルティーク。 「ついに理想の頭痛薬に出会えた!」と歓喜したのも束の間、薬局の会計で領収書を見た瞬間に青ざめました。
「高すぎる……!!」
ナルティークは画期的な新薬である分、薬価が非常に高く設定されています。
ナルティークとレイボーの正確な薬価・自己負担額(2026年9月現在)
公的な薬価基準に基づいた、1錠あたりの薬剤費および自己負担額の詳細は以下の通りです。
| 薬剤名・規格 | 1錠あたりの薬価(10割) | 3割負担 | 2割負担 | 1割負担 |
|---|---|---|---|---|
| ナルティークOD錠75mg | 2,923.20円 | 約877円 | 約585円 | 約292円 |
| レイボー錠50mg | 324.70円 | 約97円 | 約65円 | 約32円 |
| レイボー錠100mg | 570.90円 | 約171円 | 約114円 | 約57円 |
※ 上記は純粋な薬剤料のみの金額です。実際の調剤薬局の窓口では、これに加えて調剤技術料、薬学管理料、処方箋料、加算などが加わるため、**3割負担の窓口で支払う実質的な自己負担額は、1錠あたり「約950円〜1,000円近く」**に達します。
レイボーの「約5〜9倍」という価格差の衝撃
比較してみると、ナルティーク(3割負担で約877円)は、レイボー50mg(約97円)の約9倍、レイボー100mg(約171円)と比べても5倍以上の価格です。
頭痛発作が1回起きるたびに、財布から1,000円札が1枚ずつ消えていく計算になります。
予防目的(隔日投与)なら月13,000円超の負担
ナルティークは発作時の頓服だけでなく、「発症抑制(予防)」としても承認されています。もし予防目的で指示通り「隔日(2日に1回・月14〜15錠)」服用した場合、3割負担でも薬剤費だけで月額約12,300円〜13,100円が毎月固定で吹き飛びます。
月に1〜2回程度しか頭痛が起きない方であれば、まだ許容できるかもしれません。 しかし、私のように群発頭痛の群発期であったり、気圧の変動や疲労で週に何回も発作を繰り返す人間が、発作のたびにナルティークを飲んでいたらどうなるか。
毎月の薬代だけで数万円が吹き飛んでしまいます。 好酸球性胃腸炎の治療費や定期検査、重症喘息の吸入薬・生物学的製剤の費用も重くのしかかっている身にとって、この金額はあまりにも過酷です。
「効果は抜群で副作用もない。でも、高すぎて続けたくても続けられない」
これが、今の私が直面している残酷な現実です。
現在の結論:「場面ごとの使い分け」で安くなる日を待つ
理想を言えば、すべての頭痛発作をナルティークで抑えたいのは山々です。 しかし財布の限界がある以上、今は**「シチュエーションに応じたシビアな使い分け」**で凌ぐしかありません。
場面ごとのマイルール
| 状況・タイミング | 使う薬 | 理由・判断基準 |
|---|---|---|
| 仕事中・外出時・人と会う予定がある時 | ナルティーク | 体が痺れて倒れるわけにいかない場面。「1錠1,000円の活動維持代」と割り切って服用し、日中のパフォーマンスを保つ。 |
| 帰宅後・就寝前・休日の在宅時 | レイボー | 「どうせあとは寝るだけ」「体が痺れて動けなくなっても、そのまま布団に倒れ込めばいい」場面。薬代を抑えるためにレイボーを選択する。 |
このように、「絶対に動かなければいけない場面」だけをナルティークで死守し、それ以外の「倒れ込んでも大丈夫な場面」はレイボーの痺れを睡眠でやり過ごす、という二刀流でコストと活動性のバランスを取っています。
医療費の壁と、患者としての願い
病気の痛みを止めるための薬が、高額すぎるせいで満足に使えないというのは、慢性疾患や難病を抱える患者にとって本当に悔しく、やりきれないことです。
「痛みを我慢して動けなくなるか、それとも生活費を削って1回1,000円を払うか」という選択を迫られる日常は、精神的にも削られます。
とはいえ、以前は存在しなかった「血管を収縮させず、強烈な痺れも出ない新しい選択肢」が医療の進歩によって生まれたこと自体は、間違いなく希望です。
今はこの使い分けでなんとか日々の発作を凌ぎつつ、今後の薬価改定や、将来的な後発品(ジェネリック)の登場によって、少しでも安く、誰もが無理なく使い続けられる価格になってくれる日を気長に待とうと思います。